薊畑

Thistleのブログ

勉強が嫌いな人のための受験テクニック集

はじめに

大学に入学しお役御免になった受験テクニックを公開します。基本的に、できるだけ少ない労力でできるだけ良い成績を取ることを目標に考えられた手法です。(つまり、1日15時間勉強とかはしたくないということです)
ここに書かれていることはほとんどが自分自身で検証し効果が確認できたものですが、確認方法は得点などの客観的指標でなく主観的な体感であることも多いです。また、塾や学校などで最低限は勉強している前提で書かれています。ほかに、数学はこの公式を覚えると良い!というようなことは一切書いていないので、そういうことが知りたい人は別のブログを当たってください。

「お前、誰?」と思っている方は最後に自己紹介を書くつもりなのでそちらをご覧ください。

目次

時間のない受験生は自分にとって有益だと思えるところだけ読んでください。
おすすめのパートは現代文なので、ここは不要と思っても読んでおくことを勧めます。

科目ごとのテクニック

特定の科目に限らないこと

学習をしていて分からないことが出てきたとき、すぐ調べたり人に聞くのではなく、自分が何が分からないのかを言葉にできるまで、理想的にはYesNoで答えられる質問1個に落とし込めるまで整理するのがよい。分からないものの周辺には理解が不確かなことがあるので、これを行うことでその分野の理解が整理され、疑問の答えが分からなかったとしてもその分野の理解が深まる。

国語

現代文

現文の点が悪い ≒ 採点官「あなたが今まで読んだ本は全て誤読している」なので、少なくとも自分が満足できる解答は作れるようにした。これで点が悪かった場合は採点官が誤読しているということだから気にしないことにした。

共通テストにも二次試験にも使える手法

まず、受験用に行ったわけではないが結果として対策となった行為が2つあった。
1つ目は、哲学的な事柄について自分なりの考えを持つこと。現文に出てくる文章の題材は日常的には考えないものが多いため理解に手間取る。小林秀雄等の頻出作家の言っていそうなことについて考えを深めると、「これは私の考えたあの思想に通ずるな」とか思え、文章理解が早まる。
2つ目は、作文をすること。誰かに主張を伝えようとして行きつく形式は似通ったものになることがある。その為、自分の形式を持っておくと作家の書いた文章で使われる手法の意図も察せるようになり、文章のリズムが掴みやすくなる。例えば、林修の口癖の「論理の貫通」は、ある程度考えて文章を書けば自然と使い出す手法だと思う。

次に、受験用に行った対策について。
始めに、文章はいくつかの部位から成り立っていると考えた。例えば、知識の導入、話題の定義、問題提起、メインの主張、直前の補足、といったような部位だ。そして、文章をこれに分解することができれば理解の助けになると考え、実際にそれを実行してみたが大して役に立たなかった。
次に、これを少し緩め、段落ごとにまとめを作り、それで文章の流れを見るという方針に切り替えた。具体的には、段落が1つ進むごとに進んだ段落を簡潔にまとめ、同時にそれまでに作ったまとめを全て思い起こして主張の流れを確認する、ということを行った。これを行うと筆者がどのように何を言いたいのかが分かって文章理解の助けとなった。だが、受験本番で行うには負荷が大きすぎたために没となった。しかし、これがある程度(=国語の授業中にならできる程度)できるようになると、文章を書くときに主張の流れを意識して書けるようになるので、答案作成や日常での文章作成に役立った。
文章全体の構造を考えるほかに、一つの文を読むときにも文の構造を意識しながら読むと読みやすい。その文の主語はどれで述語がどれか程度は最低でも意識しておくとよい。特に傍線部は、文の意味を取り違えると大幅な失点につながるので注意するべきである。文の主語はどれであるかや修飾語が何を修飾しているかなどは小学校で習ったことだし、できていると思っている人も多いと思うが、大学入試レベルの複雑な文章だとこれが読解できるかできないかの分け目となることもあるので注意する方がよい。

共通テスト用に行った対策

始めに過去問を解き始めた時は、消去法をすると正しいものが2つ残るギャンブルにしか思えなかった。しかし、倫理政経の感覚を応用したら点数が上がった。
「倫政の感覚」について詳しく説明する。ピンとこなかった場合は自分で問題を解くと分かると思う。倫政の問題で提示される選択肢は、大抵2~4個の小問に簡単に分けることができ、さらにそれらは完全に正しいか完全に間違っているかの2択である。

例えば、「日本天台宗の開祖である最澄は、唐から帰国した後、広く種々の学問を学ぶことのできる、庶民のための学校である綜芸種智院を設立した」という選択肢の場合、「日本天台宗の開祖である最澄は / 唐から帰国した後 / 広く種々の学問を学ぶことのできる / 庶民のための学校である/綜芸種智院を設立した」 と5つに分けることができる。これらについて一つづつ真偽を確認していき、一つでも間違いがあればその選択肢は答えではない。この場合は、「綜芸種智院を設立した」のパートが偽であるため、この選択肢は答えではない。

国語の問題と倫政の問題は、使える根拠が文中か全世界かという違いがあるだけで他は同じである。だから、例と同じように、文章全体の正否を考えるのでなく、選択肢を小問に分けそれぞれの真偽を考える、という風に意識を切り替えると得点が伸びる。私の場合は、これを意識してから解いた現代文の過去問の得点が100点と92点で、それまでより20点程度伸びた。(本番ではこの点は出なかったが……)

二次試験用に行った対策

文章の言おうとしていることは分かっているつもりだったのだが、それが得点につながらなかった。その原因は、文中のキーとなる要素を答案を書く段になると書き忘れることと、そもそもキーだと思っていないことにあった。
その対策として、キーとなる部分をすべてマークし、答案作成時に検索しやすくしてはどうかと考えたが、マークするときにどこがキーとなるのかがよく分からず失敗した。そこで、その逆、つまり絶対に本筋に関係しないだろう部分を消すことにしたら成功した。例えば、具体例や導入、逆説などは丸々要らないので消すことができる。また、この手法はキーとなる部分を検索しやすくするだけでなく、文章全体をより整理した状態で理解する役にも立ち、文章そのものが読みやすくなる効果があった。
この手法を行う時、最初は蛍光ペンで文章を消すことを勧める。一行分を消せる程度の太さのペンを用いると、あまり手間をかけずに実行でき、かつ視認性に優れるからだ。しかし、受験本番に蛍光ペンは持ち込み禁止なので、そのほかの手法で代替する必要がある。私は、下の画像のように書き込みをしたときに検索性、視認性、かかる時間の全てで性能が良かったためにこの手法を利用していた。

キー以外消す法の例の画像

古文・漢文

古文は古文315と学校でもらった古典文法の本、漢文は「文脈で学ぶ 漢文句形とキーワード」を使って学習した。
こういった科目は、漫然と何周もするよりも、読んだところまでを完璧にしながら一周だけしてそのあとで復習する、という方が覚えやすい。例えば、単語を覚える場合、最初から現在の項まで1個1個の単語の意味が気負わずにわかる程度まで覚えてから次の単語に進む、という風にすると良い。なぜなら、あるところまで完璧にした後に新しい場所を学習すると、既習分野が出てきたときに復習になり、結果的に何週もしたのと同等の結果が得られるからである。
覚える方法についてはその他の項を参照。

物理

科学は、本来は何の意味も持たない実験結果があったうえで、人間がそれをモデル化して一般化して意味を見出す、という経路をたどる。ただし、ここでのモデル化とは、現実の現象を、人間が明確に定義したもののみから成る仮想的な世界の中の現象に落とし込むことを指す。例えば、ニュートン運動方程式は、現実のものの運動を、座標系と質点、力を定義することでモデル化して記述している(余談:あの式は力の定義式だという見方もある)。このように、現実では複雑に絡み合った煩雑な現象を、定義を明確にして余分なものをそぎ落とすことで議論できるようにしたものが科学、少なくとも受験の科学であり、対象の定義が必須だという点が特徴だ。
物理学を学習するときにはこの考えを持っておくとよい。学習中に出てくる法則はこれに従っているので、そこに出てくるものの定義が分かるように学習をすると理解がしやすくなる。
また、物理法則を学習するときはその法則がどのような場合に適用でき、適用によって起こるよいことが何か、ということも併せて記憶しておくと演習の時に公式を使いやすくなる。
そのほかには、自分があまり分かっていないと感じられた法則については、それが関わりそうで、かつ関わった場合の挙動が非自明な現象について考察すると良い。非自明と感じられるということはそこの理解が足りないということなので、それを考えているうちに何が分かっていないのか分かることがある。


ある程度物理に慣れたら、共通テストの過去問を解くと良い。基本的に簡単な問題が多いのだが、たまに何の法則を立てるのか分かりづらくその上直感で解くと不正解になる問題がある。こういった問題を解くと、物理学を直感に頼らず法則ベースで考える感覚が掴める。

化学

受験科学分野なので物理学とほぼ同じことができる。
私は、A1くらいの紙を用意して、それに学習範囲の内容をすべて書き出した。このとき、書き込む内容についていくつかの項目に分類し、同じ分類のものはできるだけ近くに寄せるように書いた。例えば、ベンゼン環に関する項を書く時は、まずベンゼン環がどのようなものかを書き、その特徴は何かを書き、合成法を一箇所にまとめ、反応も一箇所にまとめ、という風にした。この例では、ベンゼン環に関する内容を定義、特徴、合成、反応の4つに分類している。この分類法をすべてのものについて統一することで、全体的な理解ができる。また、酸化還元・酸塩基などの反応、浸透圧系の反応、有機化合物、無機化合物、といった風に分け、項目自体も似たものを近くに配置するようにした。さらに、これを作った後で書きこんだものを何も見ずに暗唱できるようにすると問題が解きやすくなり、この時にも分類をすることで何を思い出せばよいか考えやすくなる。
私はこれによって16枚程度のまとめが作られ部屋の一角が茶色くなった(家にあった包装紙を使ったため)。これをすることで、基礎問題集(センサー)とセンター・二次の過去問を解いただけで2次の過去問で40点が安定する程度にはなれた。(ただ、本番では29点だったので処理能力を上げる意味で問題集は解いた方がよいと思う)

英語

Listeningの問題を先読みしておくと得点しやすくなる。そのために、WritingやReadingをできるだけ短時間でできるように訓練すると良い。
Writingでは、まず日本語で書く内容を考え、その内容を一見高度に見える論理構造(逆説を入れるなど)に書き換え、それを英語に落とし込む、ということをすると良い。
大学によって英文の系統には違いがあり、何となくで大体読めてしまう英文と一つ一つの文法や単語が難しいためしっかり解析しないと読めない英文がある。後者の場合、文脈上区切りとなりそうなところに / を入れながら、現在の文章の主語が何かなど基本構造を簡単に意識しながら読むと読みやすかった(修飾や挿入が多い文章だと特に)。また、前者の場合でも同じことをしながら読むと多少の効果があるように思えた。
少なくとも、東大/早稲田大の英語は文法や単語が怪しくても結構何とかなるので、そこを固めるよりはほかの科目に時間を割く方がよいかもしれない。Reading/Listeningは英文の意味が勘で分かれば問題ないし、Writingも平易な文章を書くことに注力すれば文法で減点されても大きな影響は出ない。東大英語の4Aはその日の運勢に任せても点数に大して差は出ないし、早稲田の単語問題も点数が小さいから間違えてもそこまでダメージがない。ただ、中一レベルの文法が怪しい状態で大学に入ると精神衛生上よくないので最低限はできるようになっておいた方がよい。
大学に入ると、何かの手違いですべて英語で90分リスニングの授業が展開されることがあるので、Listeningの力はつけておいた方がよい。

数学

苦手だったのでなし

科目に分けられないテクニック

受験勉強が嫌いな人へ

ここまでを読んだ人なら、私が勉強の内容についてよりもどういう考え方をしたらより効率的に得点できるかに重点を置いていると分かると思う。よくある常套句だが、努力をしたくない場合は楽しめるように方向性を少しずらせばよい(この記事は、どれだけ好き勝手やっても結果が出れば問題はない、という考え方が近いが)。自分に合った方向性のずらし方を考え、それを実践すれば嫌なことをし続ける必要はなくなる。私の場合は単純作業の効率化が楽しかったのでこうなった。嫌なことを行い続けてもよい成果は出ないので、こういった手法に頼ることは意味がある。

また、大学に入ってからも勉強をすることは分かっていたので、それをできるだけ効率的にこなせるよう理論を作って準備をしようと考えていた。大学受験の期間というのは、人生において本当に勉強だけしかしなくてよい貴重な時間なので、いかに勉強をするかということの理論を作るには絶好の時期と言える。大学での勉強のみで考えなくとも、勉強しかしない受験期間というのは得られるデータの均一性や行える実験の回数と質においてこれ以上ない場といえ、どうすればうまく思考できるのかというようなことを練習するには最高の期間だった。私のこの考え方はかなり特殊なものだと思うのだが、同じようなことを思える人がいるなら、参考にすると受験勉強のストレスを軽減できるかもしれない。ここでの研究成果についてはその他の項にあるので気になる人はそちらを参照してほしい。

直前期より前での勉強

夏休みなど、自分で活動時間を決められる時期には深夜まで勉強して朝が遅かった。深夜の方が勉強がはかどるという人はそこそこいるので、昼間にどうにも勉強がはかどらないという場合は時間をずらしてみると良いかもしれない(ずらしすぎると新学期が辛いので注意)。

私は、夏休みまでで知識の大まかなインプットを行い、夏休みに物化や古文漢文の知識を実際に使えるようにするという計画で勉強していた(実際は物化しか終わらなかったが)。ここら辺の計画立ては自分に合うように決めると良いと思う。

直前期での勉強

家で勉強に集中できなかったので図書館で勉強していた。家でずっと勉強した後急に外に出るとパフォーマンスが著しく低下することがあるので、受験前の期間は図書館や自習室など家と違う環境で勉強すると良いと思う。

本番など

集中力を上げたい場合

コーヒーを飲むと問題に集中しやすくなる。ただ、大量に、私の場合はマグカップ3杯飲むと試験中に尿意を覚えることになるので注意。2杯程度がよい。
また、問題を解いていて集中を続けられないような気がしてきた時は、単に糖分が切れているだけの場合があるので飴などで補充すると良い。私はグリーンダカラの飴を持ち歩いていた。個数を変えて時間を測った結果、飴1個につき大体15分程度集中力が持つらしいと分かった。つまり、共テ数学の前には4つ一気に舐めてから解き始めると集中力が切れないということだ。ただ、この手法は血糖値が一気に上がっていそうなので健康に悪そうだし、二次試験150分の時に10個舐めないと集中力が持たないというわけでもなく、1個15分という数字にそれほど信憑性があるわけではない。3つくらいなめておけば1科目分は持つのではないだろうか。

そのほか

  • 試験会場の広さや試験場全体の色など、一見影響のなさそうなものでもパフォーマンスに響く場合がある。こういう現象があると知っているだけでも大きいと思う。
  • 雑念で集中が阻害される場合、直前に聞く音楽を工夫すると良いかもしれない。ものによっては雑念阻害効果がある。何にその効果があるのかは個人差があると思う。
  • イヤホンを持っていき英語のテスト前にリスニング音源を聞いておくと耳が慣れるかもしれない。あまり点数が上がったような気はしなかったが。
  • 持っていく時計は操作音の出ないストップウォッチがよい。いちいち開始時間を引かなくても経過時間が秒単位でわかるので、余計な時間をかけないで済む。持ってきてよい時計の種類には懐中時計と書いてあることがあり、ストップウォッチは多分これに含まれる。受験会場でもストップウォッチを開始する「ピッ」という音が聞こえていたと思う。たまにアナログ時計を持ってきている人がいるがこの人はまともに時間を見れるのかかなり疑問がある。
  • 貧血気味でずっと椅子に座っているのが辛い場合、片足ずつ椅子の上に上げて休めると楽だった。
  • 手汗がひどくて紙に文字が書けない場合、手のひらだけ覆うタイプの手袋が売っているので買うと良い。

そのほか

こちらの記事

メタ認知能力を応用した認識改竄の話 - 薊畑

に、かなり役立ちはするのだがここには書けないような内容を書いた。最初にいろいろと注意事項を書いてあるので、それを読んで大丈夫な人だけ読み進めてほしい。

これで遊ぶとゲン担ぎができるかもしれない。私は9浪位したと思う。

自己紹介

筑波大付属駒場高校から東京大学理科一類に進学した者です。競技プログラミングをThistleという名前でしています(していました)。

以下参考までに開示得点です。資料が見つかる気がしなかったので有効桁数が少ないですが……。

開示得点

共通テスト合計:824点
数1A:95
数2B:80(?)
国語:168点
物理:100点
化学:90くらい。不明
倫理政経:92くらい。
英語:9割はとったと思う。

二次試験合計:260点代前半
数学:60点台後半
国語:41点
英語:86点
物理:50点
化学:29点

終わりに

ここまで散々短い勉強時間でも得点をとる方法を書いてきましたが、ほかの受験生が毎日十時間超勉強しているという話を聞いた後で自分の生活を振り返ると生きている価値がないような気がしてくるので程々にしておいた方がよいと思います。特に、帰ってきた成績が多分その人よりも良いだろうなと思える程度に良かったりすると、「なんでこんな奴が」という気分になってくることがあります。贅沢ですね。

また、真っ当に勉強しないで邪道なことばかりしていると、受験が終わった後に何かをした感や達成感がなく、他の人が「合格した……手が震えてる……」とか言ってるのを見てかなりもったいないことをした気分になります。普通なら大学合格は人生で嬉しい瞬間Top10に入りそうなものなんですけどね。人生を楽しみたいなら真っ当な勉強をした方がよいかもしれません。(ただ、この考え方を理解できた人は、受験をエンタメとして見てしまっているため、もう真っ当な受験をするのは無理です。諦めましょう。)

ただ、ここに書いてあるような技術を自分で作れる人は、塾でひたすら勉強をしているよりも、一度まとまった時間をとって自分なりの理解を追求する方が効率が良いかもしれません。

分かりづらい文章や誤字があった場合はTwitterやコメントで教えてくださると嬉しいです。

同じ大学を志望する人は大学で会えると良いですね。合格を目指して頑張ってください。